COLUMNコラム

第2回「よみがえる空-RESCUE WINGS-」BD-BOX発売記念イベント @新宿ロフトプラスワン イベントレポート

2018年7月14日(土)に阿佐ヶ谷ロフトAで開催され、好評を博した『よみがえる空-RESCUE WINGS-』BD-BOX発売記念トークイベント。その第2回が2018年10月13日(土)に新宿ロフトプラスワンにて開催された。前回はニコ生で配信が実施され、ダイジェスト版が『よみがえる空-RESCUE WINGS-』BD-BOXに映像特典として収録されると発表されたが、今回はそういったことは一切ナシ。全てをお届けすることはできないが、その一端をご紹介する。

<第一部:アニメ関係者によるトークショー>

司会は今回も杉山潔プロデューサー。ゲストとして前回に引き続き松倉友二プロデューサーを迎え、ミリタリー好きで模型誌で作例を手がけるプロモデラーでもある声優の中村桜さん、ゲームやアニメ関連で活躍するライターの宮昌太朗さんも登壇。進行役を宣伝担当の鈴木麗が務め、ダイジェスト映像を流しつつ、それぞれの視点で観た『よみ空』を語った。

2006年の『日本オタク大賞』で審査員を務めた際に宮昌太朗賞として『よみ空』を選んだ宮さんは、「なかでも6、7話の『Bright Side of Life』はド傑作。こんなモノがテレビでかかるとは」と絶賛。この2話があったからこその授賞だったと明かした。

「救難隊の任務内容をよく知らなかった」という中村さんは、ロープウェイ事故を題材にした8、9話『少年の旅路』について「どういうことをしているのかというのがわかりました。戦闘機よりもヘリの方が好きなのでいっぱい出てくるのは嬉しかったです」と語り、杉山プロデューサーは「リアルな話が続くので、ヘリはこんなこともできるという、ちょっとスペクタクルな感じの振り切ったエピソード」であると解説した。

テレビ未放送の第13話『最後の仕事』は、杉山プロデューサー曰く「隊員と家族の姿を淡々と描き、救難シーンもほとんどないとてつもなく地味」なエピソードだが、シリーズ構成の高山さんが作ったプロットを脚本にした水上さんは、手紙のシーンを書いている時に泣いてPCから離れたのだそう。松倉プロデューサーは「高山さんは天才なんですよ」と語り、「最初はよくわからなかった『よみがえる空』というタイトルも、12話まで観ると、何てこった! となる」と高山さんの手腕を評した。

最後に一言を求められ、宮さんは「金沢出身なので懐かしく、12年ぶりに観て、街も変わったところがあるなと改めて思った」と語り、中村さんは「スタッフさんの情熱や注目点がより深くわかってすごく充実した時間でした。みんな見返さんとおえんぞ! あ、おえんぞって言いたかっただけです(笑)」と劇中のセリフで会場を沸かせた。

松倉プロデューサーは「唯一無二で色褪せることのないオンリーワンのタイトルだなと、見返してまた思う次第でした。観ていない人は観ていただき、観た人は買うこと」、杉山プロデューサーは「今後こういった作品が10年に1回ぐらいは出て来るためには、買っていただいて応援していただくということで」と、2人ともプロデューサーらしい言葉で締め、第一部は終了となった。

<第二部:救難関係者によるトークショー>

第二部が始まる前には『よみがえる空-RESCUE WINGS-』BD-BOXの映像特典『小松救難隊 最新ドキュメント』のダイジェスト版を上映。救難訓練の様子や最新鋭ヘリUH-60J IIの機体解説などが、長谷川めぐみ役の能登麻美子さんのナレーションで流された。

司会と進行は、第一部に引き続き杉山プロデューサーと宣伝担当鈴木の2人。ゲストとして、前回も登壇された元小松救難隊長の櫻田秀文さんと軍事評論家の岡部いさくさん、そして空撮も手がける放送番組プロデューサーの児玉研司さんが招かれ、ドキュメントの撮影時に撮ってきた写真を見ながらのトークが行なわれた。

本作でも中心的な存在である救難ヘリUH-60について、導入時に400カ所にも上る改修を要求したという櫻田さんは、「導入は大変だったが、使えないシーンが考えられないほど性能的にも大きさ的にも救難機として優れた機体」と大絶賛。導入時の改修にかかった費用は「メーカーに頼んで、30年、40年は使うからと分割払いにしてもらった」と裏話を披露した。岡部さんからは「ローターを外すとC-5に搭載できるサイズ。戦闘下の救難を想定し、機関銃を付けられるようにハードポイントを残させていた」と補足説明があり、計器類がデジタル化された最新のJ II型について、児玉さんが「対ミサイル用の赤外線探知装置やフレア、チャフ、IRサプレッサーなどが装備された」と解説した。

救難捜索機U-125Aは元々ビジネスジェットであるためハードポイントは設けられていないが、櫻田さんによると「桁が丈夫なので後から付けても大丈夫」ということで翼下にセンサーポッドが取り付けられたとのこと。岡部さんは「日本にしかないので世界の航空機ファンの人気が高いんです」と同機の意外な一面を明かした。

その後、話題は災害派遣の話に。阪神・淡路大震災で初動の遅れなどの問題が露呈したため、「その後、大規模災害時の運用が変わった」と語る櫻田さん。「それまでは行政の長からの要請がないと出動できなかったが、司令官や指揮官の命令で出られるようになった」とのことで、実際、東日本大震災の際は発生の4分後には防衛省が災害対策本部が設置、6分後には海上自衛隊の全艦艇に出港命令が下され、8分後からは陸海空それぞれの航空機による状況偵察が開始されている。

当時テレビ局にいた児玉さんの元には視聴者が撮影した映像が入り始め、「過去にない規模の災害」であると認識、松島基地の状態を知った時には「助ける側も被災者になるんだと思った」そうだ。また、櫻田さんは「1年365日、そのために機体の整備をし訓練をしてるのに、いざという時に機体が水に流され、やるべきことができなかった。申し訳なく堪えられない現実だった」と救難隊員の心情を語った。

このほか、パイロットと救難隊の関係についての話では、児玉さんは「パイロットは、事故の時は必ず救難隊が助けてくれると信じているから飛べる」、櫻田さんは「救難隊は一人の命を助けることがどれだけ大事かがわかっているから戦争に匹敵するような条件でも出られる」と述べ、深い絆で結ばれていることを伺わせた。

まだまだ話は尽きない様子だったが、残念ながら第二部もここで時間切れ。一言を求められた児玉さんは「魂のこもった歴史に残したい作品。これから航空自衛隊や救難隊を見るときには、作品を思い出しながら見ていただけると嬉しいなと思います」と語った。岡部さんは「寝そべって見ていても気持ちがだんだん正座になっていく。すごい真面目ないい作品だと思う。いろいろ辛いところもあるけどカタルシスもある、末長く見られる作品」と評し、櫻田さんは「若い人が社会に出る時、内田と同様に自分の思う形ではない社会に飛び込んで行かざるを得ないというケースがあると思います。内田が挫折を経験しながらもレスキューという中に自分の志を見出して歩んで行く姿というのは、現代の若い人たちの現実を物語っているんじゃないかと感じました」と若者にエールを送った。

杉山プロデューサーから感想を求められた進行役の鈴木は「携わった方々の話を聞いているとどんどん面白さに深みが出て来るし、救難やアニメを知れば知るほど面白くなる作品です。イベントで聞いた話や特典映像を観ていただくとよりこの作品を楽しめるんじゃないかと思っていますので、何度も見返していただきたい」と宣伝を忘れずにアピール。最後は杉山プロデューサーの「イベントをもう1回ぐらいやるかね」との言葉で締めとなった。

(執筆:中村公彦)

ブックレットコメントを一部紹介! 髙山文彦氏(シリーズ構成・脚本)

『特別な職業の人間を描くのではなく、普通の働く若者が社会に出た時ときに直面する、迷いや悩みや喜びを描こうと思った。』

ブックレットコメントを一部紹介! 水上清資氏(脚本)

『番外編の第13話「最後の仕事」執筆時のこと。子供の手紙にさしかかったところで涙が止まらなくなり、しばしPCの前を離れざるを得なかった。この時の涙は、感涙でもあったが悔し涙でもあった。』

ブックレットコメントを一部紹介! 能登麻美子氏(長谷川めぐみ役)

『今回(「よみがえる空」を)観返してみて、当時よりさらに深く心に迫ってくるものがあったり、当時は見えなかったものが見えることもあったり……。観返して良かったと思うことが多々ありました。良い作品は色褪せることなく、いつ観ても作品の中で生きる登場人物たちから多くのメッセージを受け取れるんですね。』

ブックレットコメントを一部紹介! 美郷あき氏(OP主題歌アーティスト)

『職種やエピソードは全く違いますが、生きている中でぶつかる大きな壁や、繊細な心の動き、人と人との繋がり、人間模様など、こんな未熟な私でも重なる部分があり、涙する事が多々あります。自分が歳を重ねるにつれ、拝見する度に新しい発見があります。』

ブックレットコメントを一部紹介! 影山ヒロノブ氏(ED主題歌アーティスト)

『自分が作った歌をテレビで観て聴いて本気で泣いたのもこの作品が初めてです。』

ブックレットコメントを一部紹介! 滝脇博之氏(元航空救難団司令)

『今回「よみがえる空」を改めて観直しましたが、私が戦闘機操縦者だったこともあるのでしょうか、一番印象に残ったのは、戦闘機の墜落と航空救難の状況、生き残った者のF転や殉職者の遺族の描写です。』

『よみがえる空-RESCUE WINGS-』BD-BOX映像特典「小松救難隊 最新ドキュメント」航空自衛隊小松基地 取材レポート

人命救助に命を懸ける熱き男たちのドラマをリアルに描き、航空マニアの強い支持を得たレスキューアニメ『よみがえる空-RESCUE WINGS-』。

今年2018年、航空救難団創設60周年を記念して、ついにBD-BOXが発売されます。

11月22日(木)発売の『よみがえる空-RESCUE WINGS- BD-BOX』に映像特典として収録予定の「小松救難隊 最新ドキュメント」。

暑さも続く8月某日、私たち『よみがえる空』取材チーム一行は、ドキュメントを通じて小松救難隊の“今”を広く伝えるべく、石川県小松市に所在する航空自衛隊小松基地へ取材に訪れました。

今回はそんな取材に同行した新人宣伝担当である私、鈴木麗が、初めて触れる“救難”について拙いながらレポートさせていただきます!

石川県にあるJR小松駅からタクシーで約15分。高い柵で囲まれた基地内へ入るため、厳密な受付を済ませ本部へ移動。その堅固なセキュリティに、簡単には入れない場所へ来たのだという実感、同時に、緊張感で身が引き締まる思いがしました。

けれど、廊下で出会う隊員の皆さんが、笑顔で挨拶をしてくれるのです。勝手な思い込みを持っていたことを恥じながらも、自然といつもより明るく挨拶を返している自分に気づかされました。「堅苦しい」「厳しい」「怖いところ」といった、私が持っていたイメージは、小松救難隊庁舎内の談話室に行くまでの間にほぼ全て払拭されることに。基地内はどこも明るく、建物間のスペースには芝生や樹木が植えられ、開放的な気持ちにすらなりました。

また、廊下を歩きながらあたりを見回すと、至るところにカラフルな標語ポスターが掲出されています。このポスター、全て隊員によって制作されたものだというので驚きでした。どれもイラスト・デザインがウィットに富んだものばかりで、堅苦しいイメージを持っていたはずの建物の空気をさらに和らげていたように思います。

写真▲ 談話室の入り口に貼られていたポスター。男性隊員の名札にまでユーモアが効いている。

最初に撮影予定だったファーストフライトまで少し時間が空いたため、スタッフは談話室で待機することに。日が良く入り明るい談話室の中、テーブルを囲んで談笑していると、なんだか彼らの日常を疑似体験しているかのような気分になってしまうものです。談話室には自衛隊関連の雑誌が置かれており、私も少しだけ読ませてもらったのですが、『隊員御用達のグルメ特集』のような記事も載っていて、自衛隊に関する知識がほとんどなくても軽い気持ちで楽しむことができました。いつもは厳しい訓練を行っている隊員も、休憩するときにはこういう雑誌を読んだりするのだと思うと、勝手ながら親近感のようなものすら覚えてしまうのでした。

この談話室には時折隊員の方も出入りしており、コーヒーを飲んで一服する姿なども見られたのですが、数人に一人の割合で明らかに筋肉量が違う隊員が。

この筋骨隆々の男性達は、通称「メディック」と呼ばれる隊員だそうです。救難活動の際に空中のヘリから機外に出て要救助者を助け出す役割を担っている彼らは、皆、日々筋トレを欠かさないらしく、廊下を歩いているだけで、私でも一目で「メディック」だと判別できてしまうほどでした。

それから、冷蔵庫の真向かいに座っていた私がずっと気になっていたのが、野菜室のドアに貼られている「えりこママよりすいかの差入れです」というメモでした。隊員の誰かの母なのだろうか、と思っていたところ、実は「ゑりこ」という小松市内にあるスナックのママさんからの差入れだとのこと。「ゑりこ」のママは、救難隊員達の第二の母のような存在なのだそうです。課業終了後に訪れる隊員達の相談相手になり、厳しい訓練を受ける隊員の心の支えにもなっているとのことでした。

残念ながら今回の取材で「ゑりこ」を訪れることはできなかったものの、小松救難隊を影から支える救難隊員の“母”なる方に、いつかお会いしてみたいものです。

写真▲ 談話室内は、設定に描かれているのとほぼ同じ光景が広がっている。
このほかの設定資料も多数、ギャラリーページに掲載しているので、そちらも是非ご覧になってほしい。

そうこうしているうちに、その日最初の飛行訓練の時間となりました。朝9時という時間にも関わらずその日は日差しが非常に強かったため、持参した帽子を何気なく被ってエプロン地区に向かおうとしたところ、取材スタッフから止められてしまいました。

少しでも風で飛んでしまう危険性があるものは、エプロン地区内で飛ばされた際にエンジンに吸い込まれるなど事故の原因となってしまうため、絶対に持ち込んではならないという決まりがあるそうです。確かに同行したスタッフは皆、基地での撮影に慣れているだけあって、あご紐のついた帽子を着用していました。知らずに気軽に立ち入ろうとした自分の浅慮を改めて恥じ入るのでした。

思えば送迎の車で救難隊庁舎へ向かう際にも、途中で隊員の一人が一度下車して何やらタイヤを確かめていました。聞いた話によると、エプロン地区へ立ち入る際にはタイヤの溝に小石などが挟まっていないかを必ず確認するのだそうです。改めてその安全管理の徹底ぶりに敬意の念を抱きながら、ポケットに落ちる可能性のあるものが入っていないか再三確認して、エプロン地区へ移動しました。

コンクリート張りの地面、当然周りに遮蔽物もない灼熱の日差しの中、広大な土地の至るところに、当たり前ながら見たこともない数多の機体。向かい側には小松空港が隣接しており、滑走路から時折旅客機が飛び立つのが、そう遠くない距離で見えます。想像していた以上のスケールの大きさに、私は得もいわれぬ高揚感を覚えました。

待機している救難ヘリ・UH-60JⅡと救難捜索機・U-125Aを横目に徒歩でエプロン内を移動。隊員達が整備や点検を行う中、抑えきれぬ好奇心で機体をまじまじと眺めながら、目的のUH-60JⅡのそばへ到着しました。風が強いことから目の保護のために手渡された防塵ゴーグルを装着して、離陸するのを待ちます。

ローターが徐々に回りだし、上がっていく回転速度。しだいに機体が浮き上がり、機尾が上がります。あれだけ重量のありそうな物体が空中に浮かび上がっていく光景は、映像では何度か見たことはあっても、これだけの距離で目の当たりにするとやはり興奮してしまうものでした。

そうして水平から40度ほどまで機尾を上げた機体は、そのままの前傾姿勢で飛び立っていきます。これがとにかくかっこいいのです。なぜ前傾姿勢なのかはよく知らないまま離陸風景を目にしたのですが、理由はわからずとも思わず見惚れてしまうような美しさを感じてしまうのでした。

ちなみにヘリが前傾で離陸する理由は、進行方向にローターを前傾させることによって前進力を得るためだそうです。ただ、今回の飛行については撮影が入っているということもあり、通常よりもパフォーマンスに近い飛び方とのことでした。同行したメンバーも、「こんなにきれいな離陸はなかなか目に出来ない」と絶賛。貴重なシーンを快く見せてくださった救難隊の皆様、ありがとうございました。

こうして離陸風景をかなりの至近距離で見せていただいたのですが、身を以て感じることができたのは、「風、強っ!」ということでした。もちろん至近距離とはいっても、誘導をしている隊員からは数メートル離れたところにいたのですが、それにもかかわらず、気を引き締めて立っていなければ飛ばされてしまうのでは、というほどの強風でした。

『よみがえる空』では女性隊員がUH-60J(※)の誘導を行っているシーンが何度か描かれるのですが、何気なく見ていたその場面に映る彼女の足腰の強健さをこうして実感することとなるとは思ってもみませんでした。
(※:TVアニメ放送当時は小松救難隊には救難救助機としてUH-60Jが配備されていたが、現在は最新型のUH-60JⅡにリプレースされている)

写真▲ 実際の誘導風景。

写真▲ 作中で描かれる誘導風景。

荘厳と飛び立ったUH-60JⅡは晴天の青空を颯爽と移動して、少し背丈の高い草原を円形に撫で付けながら登場。これまで映画やアニメでしか見たことのなかったこの風には、「ダウンウォッシュ」という名前があるそうです。実際問題ただの風であることに変わりはないのかもしれませんが、まさか自分が「ダウンウォッシュ」を全身に浴びることができる日が来るとは、という何とも言えない感動がありました。

そうこうしているうちに機体のドアが開き、ワイヤーが地面へおろされました。ワイヤーに吊り下げられて降りてくるのは、筋骨隆々の男性。なるほど、これがさっき見た「メディック」か、と納得しながらも、何より驚いたのはその後です。地上○○メートルの高さのロープに、なんと片腕の力だけでぶら下がっている?!

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あとから聞いたところ、着用したハーネスにホイストフックを繋いでいるので、けして腕の力でぶら下がっているというわけではないそうでした。安全面から考えれば当然のことなのでしょうが……。

とはいうものの、メディックの隊員は普段の筋トレで「両腕でやると負荷が足りないから」という理由で、片腕のみで懸垂をするらしいので、彼らならハーネスがない状態でも問題なく任務を遂行できてしまうのでしょう。

UH-60JⅡが要救助者役のダミー人形に近づき、隊員がワイヤーと共に地上へ降り立ちます。地上で待機していた隊員と合流。そこからの手際が、恐ろしいほどに迅速なのです。ほんの一瞬、私が足元の草むらを跳ね回るバッタに気を取られている隙に、担架はすでに地上から数メートルの高さまで吊り上げられていました。地上でもう一人の隊員が、担架が回転してしまわないようもう一本のロープを引っ張り、気づけばもう担架は救難機内に格納されていました。

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地上から見上げる救難機の様子は、まさに雄姿と呼ぶにふさわしいものでした。

もしも今後、何かの折に自分が救助を求める立場になってしまったとして、上空にあの紺色の機影が現れ、孤独と絶望に打ちのめされる自分のもとに差しのべられるワイヤーは、どれほど頼もしいことでしょうか。

私は経験したこともない遭難に思いを馳せ、吹きすさぶダウンウォッシュの中、その勇壮さに思わず武者震いしてしまうのでした。

その後、整備風景も見学・取材させていただくことに。

整備員が整備作業を行う際に、防音用のイヤーマフを耳からずらして頭につけていたのだが、それがなんだか動物の耳のように見えてかわいいのです。

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かわいい、などという至極無礼な感想を述べてしまいましたが、救難活動のかなめとなる機体の整備・点検をする彼らの姿は、真剣そのものでした。熟練の手際で複雑な機体を迅速にメンテナンスする姿は、まさに職人。このスピード感に救難の成功がかかっているのだと思うと、部外者ながら身が引き締まる思いがします。

写真▲ 長い棒のついた鏡を使って、目の届かないプロペラの上面まで入念に点検する。これを見たとき、歯医者でよく見かける口内鏡を真っ先に連想した。

ちなみに、近くにある空港から旅客機が離陸する姿も見ることができたのですが、機体の種類によって離陸時のエンジン音(風を切る音)が全く異なって聞こえるのが印象的でした。個人的には、戦闘機が離陸する際の風を切り裂くような尖った音と、地響きのように鼓膜を震わす低音が一番好みでした。

今回の取材では、基地内の風景や実際の機体・訓練風景を撮影させてもらうのみでなく、実際に救難活動に携わっている隊員6名にもインタビューを敢行しました。インタビューでは、彼らが救難隊員を志したきっかけやこれまで救難の現場で向き合ってきた経験、実際の任務内容や機材の運用方法など専門的な内容に至るまで、本当に多岐に渡るお話を伺うことができました。

インタビューを受けていただいた方のみでなく、撮影を行うにあたって様々な方と話をしてみて感じたのは、どの隊員も皆、非常に温厚で人間味溢れる方ばかりだということです。そしてもう一つ共通するのは、それぞれの仕事に対して、並々ならぬ熱意を持っているという点でした。救難の現場とアニメの現場では仕事の内容はまるで違えども、新人の私にとって、“仕事”というものに対する向き合い方という意味で大変刺激になるものでした。

また、インタビューを行うにあたって隊長室や執務室など色々な部屋にお邪魔したのですが、どの部屋にも航空機の模型が丁寧に並べられており、任務のみでなく、機体に対する愛情を感じられたのが印象的でした。

このインタビューの内容については、11月22日(木)発売の『よみがえる空-RESCUE WINGS- BD-BOX』に映像特典として収録予定の「小松救難隊 最新ドキュメント」、および11月21日発売の雑誌『航空ファン』にも一部掲載予定なので、是非そちらでご覧ください。

また「小松救難隊 最新ドキュメント」は、10月よりバンダイチャンネルほか配信サイトにてダイジェスト版を配信予定です。少しでも航空救難団に興味を持ってくださった方は、まずそちらもご覧いただければ幸いです。

最後のインタビューを終えた頃には時刻は19時を回り、我々一行は日没時間を過ぎてすっかり暗くなったエプロン地区へ再び移動。ナイトフライトと呼ばれる、夜間の飛行訓練の着陸風景を撮影するためでした。

隣接する小松空港の誘導灯が色とりどりに暗闇に明かりをともしており、さながらイルミネーションのようで少しロマンチックにも感じます。BGMは我々のすぐ横でアイドリングをしている戦闘機から発されるエンジンの轟音です。だが、その臓腑まで響くような低音にも、なんだか心地よさすら抱くようになっていました。

そんな感傷に浸っているうちに、ナイトフライトを終えたU-125Aが我々の目の前にランディング。轟音の中、両翼に光をともしたU-125Aはこちらに向かって徐々にスピードを落としていきます。一日を通して行った撮影の終わりを飾るにふさわしいその光景に、その日何度目か分からない強い感動を覚えるのでした。

今回の取材で撮影した離陸・着陸シーンの映像は、ドキュメントに一部収録予定です。拙い言葉では伝えきれない壮観を、一度是非映像で目にしてほしいと切に思います。

写真▲ ランディングするU-125A。

普段の生活で、「救難隊」という存在を身近に感じられる機会はなかなかないでしょう。かくいう私も、今回仕事で『よみがえる空』という作品に携わることになるまで、「救難隊」のことはニュースでたまに見かける程度の存在としてしか認識していませんでした。

機体の仕組みだとか救難活動の子細なフローだとか、そういった詳しい知識は私にはまだありません。ですが今回の取材で、救難に携わる人々と言葉を交わし、訓練風景を目の当たりにしたことで、救難活動、はたまた救難に携わる救難隊員という存在に対して強い興味が芽生えたのは確かです。

そういう意味で、決して美しいドラマばかりではない救難活動の現実や、救難に携わる人々の心情変化までリアルに描いた『よみがえる空』は、「救難」の世界を知るにふさわしい作品だと思います。

作品では救難の様子だけではなく、初めは望まぬ配属であったいち救難パイロットである主人公が、「救難」や周りの人々に携わっていく中で徐々に“仕事”に対して正面から向き合っていく過程も克明に描かれています。そういう意味でも、救難という“仕事”に全霊を捧げる隊員達から強い感銘を受けた私からも、“仕事”をするすべての人にお勧めしたいと思っています。

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最後に、改めての告知となりますが、今回撮影および取材を敢行した「小松救難隊 最新ドキュメント」は、11月22日(木)発売の『よみがえる空-RESCUE WINGS- BD-BOX』に映像特典として収録予定です。作品をご覧になったことがある方も、一度ドキュメントで実際の救難に触れたうえで改めて見直すことで、新たな楽しみ方を発見していただけるのではないでしょうか。

また、9月14日(金)からはバンダイチャンネルほか配信サイトにて『よみがえる空』第1話~第12話の配信が開始します。10月からは同サイトにて、本ドキュメントのダイジェスト版の配信も予定しています。

今回のレポートで紹介したのは、あくまで取材の一部にすぎません。皆様には是非その目で、日本のレスキューを支える小松救難隊の日々の訓練風景を確かめていただきたいのです。そして、作品をまだ見たことがないすべての人に、『よみがえる空』という作品を味わってもらえれば幸いです。

推薦コメント:齊藤治和 元空将(元航空幕僚長)

写真齊藤治和 元空将(元航空幕僚長)

荒れ狂う海原や急峻な谷底、足元を洗う濁流の中、消えかかる命の炎を一本の命綱に託して、必死に守る者達がいる。
航空救難団である。
彼らの達成感と葛藤、喜びと悲しみ、そしてその生きざまを是非知って欲しい。

推薦コメント:池田五十二 元一佐(元小松救難隊長)

写真池田五十二 元一佐(元小松救難隊長)

救難部隊の情熱を『よみがえる空』を通して感じていただければ幸いです。

まずは、航空自衛隊救難隊のモットーから説明しましょう。
『That others may live』(他者を生かすために)は自分の命を投げうってでも他を助けるという究極の誓いです。

そのために隊員は普段からどんな厳しい訓練をも自分に課して有事に備えますが、その時はどんな過酷な現場に遭遇するか分からないので、未知との闘いであり、自分の弱さとの闘いでもあります。
だから、他を救った時には自分も救われた気がするのでしょう。
そんな勇気ある活動や内面の葛藤を詳細まで忠実に描いた『よみ空』は我ら救難に携わった者からは絶賛されてます。
主人公内田3尉も戦闘機の華々しい世界からこの地味だけどやり甲斐のある世界に魅了されていきます。
内田3尉がメディックと山岳救難訓練に行くんですが、僕も若い頃、同じように訓練に行きメディックの偉大さを知りました。

そもそも助け合いは、日本人の根本となる精神かもしれません。皆さんもご覧になって日本人の魂を呼び起こしてください。

『よみがえる空-RESCUE WINGS-』BD-BOX発売記念トークイベント@阿佐ヶ谷ロフトA イベントレポート

人命救助に命を懸ける熱き男たちのドラマと、リアルな描写で航空マニアの強い支持を得たレスキューアニメの決定版『よみがえる空-RESCUE WINGS-』。そんな本作のBD-BOX発売記念トークイベントが、3連休の初日にあたる2018年7月14日(土)、阿佐ヶ谷ロフトAにて開催された。また、当日は21時までニコ生の配信も実施。本レポートでは、ニコ生と同様に21時までの模様をお届けする。なお、21時以降のトーク内容も含めたイベントのダイジェスト版が、11月22日(木)発売の『よみがえる空-RESCUE WINGS- BD-BOX』に映像特典として収録されているので、ぜひチェックして頂きたい。

<第一部:アニメスタッフによるトークショー>

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本イベントの進行を務めるのは杉山潔プロデューサーで、ゲストは松倉友二プロデューサー、サンジゲン代表取締役の松浦裕暁さんとCGクリエイターの河野達也さん、プロモデラーの二宮茂幸さん。当時を振り返った松倉プロデューサーは「アニメ史に残るすごくいいものを作ったという自負がありました」とコメント。続いて、松浦さんは「SFの時は想像でモーション集を作ったりするんですけど、この作品ではそれが許されない。観ている皆さんがプロ並みなので、全くごまかせないです(笑)」と求められるクオリティの高さを冗談交じりに語った。また、企画書の段階では「史上初の女性救難隊員の成長物語」だったため、本当に何が描きたいのかを突き詰めた結果、現在の形に落ち着いたという制作の裏話も飛び出した。

航空機の描写は、ローター・ブレードのブレや反り上がりなど細かなこだわりが多く、会場に集まった熱心なファンの方々はそのディープな話にも深く頷いていた。さらに、メイキング写真を交えながらの現地取材の貴重な体験談の数々は、笑いの多い和やかな雰囲気の中で語られていった。そして、ここからテーマは思い出深いエピソードに移っていく。二宮さんは「海上に落ちたイーグルの乗員を救出する第7話」、松浦さんは「UH-60Jが雪の降る真っ暗闇を飛ぶ第11話」、河野さんは「UH-60Jがゴンドラをつり下げる第9話とリアルに描かれた計器パネル」、松倉プロデューサーは「ひょっこりひょうたん島の曲が流れる第6話と第7話」をセレクトし、各々の熱い想いが語られた。

最後は一言ずつメッセージを届けることに。二宮さんは「第6話と第7話はいつ観ても泣きます。この作品に関われて嬉しいです」。松浦さんは「プロの方も納得できるようなリアルな作品は作っていて楽しいし実感が湧いてきます。またぜひそういう作品を作っていきたいなと思っています」。河野さんは「最近は戦車ばかりやっているので(笑)、また飛びものもやりたいですね。こんな骨太な素晴らしい作品に関われたことに感謝しています」。松倉プロデューサーは「この作品で初めて自衛隊の中に救難部隊があることを知りました。命を救っている素晴らしい仕事をアニメで描くことができたのは自分の中でもすごく印象に残っています。30年40年経っても人に見せて恥ずかしくない仕事ができたんじゃないかなと思っています。ぜひ色んな人に観て頂きたいですし、こういうことをやっている人が今の日本にもちゃんといるんだぞと伝えたいですね」。最後は、杉山プロデューサーが「制作者の私たちから見てもすごい脚本だと思います。その第6話と第7話をぜひお楽しみください」と締め、第一部は終了。その後は第6話・第7話「Bright Side of Life(前・後編)」を上映。上映後は場内から大きな拍手が鳴り響き、トークイベントは第二部へ。

<第二部:救難関係者によるトークショー>

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司会は引き続き杉山プロデューサー、ゲストは元小松救難隊長の櫻田秀文さん、元U-125Aパイロットの藤原明治さん、元救難員の栗燒哲也さん、軍事評論家の岡部いさくさん、「航空ファン」編集次長の神野幸久さん。本作の印象を聞かれ、櫻田さんは「若者にメッセージを伝えている本当に素晴らしい作品です。題材はレスキューですけど、社会に出た若者が等しく陥る諸問題を実によく表しているなと思います」と絶賛。続いて、藤原さんは「私もパイロットを目指して航空自衛隊に入ったので、主人公の内田三尉の気持ちが分かります。いわゆるF転で私も救難に配置転換され、やっぱり最初は、自分は“戦闘機はダメなのか”という気持ちを抱えていました。ところが救難を続けていくうちにやりがいを見つけ、その任務の尊さを理解するようになり、最終的には救難が大好きになりました」と自身の経験を重ねた想いを言葉にした。栗燒さんは「実際には作品と若干違うところもあるんですが(笑)、12年前の作品とは思えないほどにリアリティがあります。救助される側の立場もしっかり描かれていて、何かの役に立つと思うので、もっと多くの人に観てもらいたいです」と激賞。救難活動経験者から褒められ続ける展開に杉山プロデューサーは照れながらも、「救難だけじゃなく、やりたかったのは仕事への向き合い方。仕事を一生懸命頑張っている人だからこそ分かるものがいっぱいあるんじゃないかなと思います」とまとめた。

杉山プロデューサーからゲストに向けて投げられた質問は多岐に及び、人を救うことについて藤原さんは「若い頃は気合いでやっていたんですけど、段々経験を積むにつれて、やるべきことを淡々とやればいいんだなという風に思えるようになりました。できることはできるけど、できないことはできない。できることをしっかりとやっていれば助けられる命は助けられる」と救難に対する考え方の変化を語った。テレビの報道について岡部さんは「ニュースで映し出される救出活動の映像の外側にこそ実は色々な出来事があるんですよね。ミッションプランニングや捜索などを経た最終的な段階として救助があります」と語った。

ここからは自衛隊に要請がかかって出動する災害派遣について説明を交えながらのトークに。1985年に発生した日本航空123便墜落事故について神野さんが「当時はGPSがなかったのもあるんですけど、ナイトビジョンゴーグルがなかったので夜間の捜索や救出が困難だったそうです」と解説すると、実際の救難活動にあたっていた栗燒さんが「私よりも詳しいですね(笑)」と驚く場面も見られた。さらにその後は、トークの柱が2011年に起こった東日本大震災に据えられ、松島救難隊や司令部の状況、当時の天候など、実際の写真をスクリーンで確認しながら専門的且つ貴重な体験談が次々と語られていった。聞き逃す暇など全くないほどに次から次へと語られていく話を聞き入るファンたちの表情も真剣そのもの。予定の1時間はあっという間に過ぎ、ニコ生で行われていた配信は21時を回ったため終了。しかし、盛り上がったトークは収まることを知らず、そこからさらに深い話へと進んでいった。そして、最後は第一部と同じく登壇したゲストが一言ずつメッセージを届けていき、杉山プロデューサーが「喋り足りない部分がまだまだありました。またこんな機会を作りたいなと思っていますので、その節はまたよろしくお願い致します」と締め、イベントは幕を閉じた。

写真写真前列右から、櫻田秀文さん、藤原明治さん、栗燒哲也さん、岡部いさくさん、神野幸久さん
後列右から、河野達也さん、二宮茂幸さん、杉山潔プロデューサー